MAGreenX™
耐火物と環境の共生へ。RH用マグネシアカーボンれんが「MAGreenX™」が切り拓く未来
MAGreenX™
チームメンバー
- 黒崎播磨耐火物グローバル営業本部名古屋支店/淵本部長
- 黒崎播磨窯炉製造事業部瀬戸内工場赤穂生産技術グループ/阿南マネージャー
- 黒崎播磨技術研究所製品プロセス研究センター/河野技術員
ブランド名に込めた、耐火物と環境共生への想い

「MAGreenX™とはどの様な製品か、教えて下さい」
河野:
MAGreenX™は製鉄所で使用される、酸化マグネシウムと黒鉛を主原料としたマグネシア・カーボンれんがと呼ばれる耐火れんが製品です。
また、製鉄所での「二次精錬」と呼ばれる製造プロセスにおける「RH」という設備で使用されることを特徴としています。
MAGreenX™をご使用頂く事で、お客様の二次精錬処理中のエネルギー効率を改善する事ができます。
また、現在二次精錬設備で広く使用されている製品に対し、クロムフリーや製造時のCO2削減など、様々なメリットを有する製品となっています。
「これまでの耐火れんが製品との違いは何ですか?」
淵本:
これまで、また現在でもRHでは酸化マグネシウムと酸化クロムを主成分とした「マグネシア・クロム」れんが、通称マグクロれんがが広く使用されていますが、MAGreenX™はこのマグクロれんがに置き換わることができる製品となります。
「MAGreenX™という名前の由来を教えて下さい」
阿南:
製品の構成成分である酸化マグネシウム、つまりマグネシアに加え、「環境に優しい商品である」ことをイメージしていただきたくて「グリーン」という単語を合わせました。
その結果、より「耐火物と環境の共生」をイメージできる製品名ができたと思っています。
今回の命名では、社内で何度もブランド名候補の募集とアンケートを繰り返すことで、全員でアイデアを磨き上げていきました。
実は、当初は末尾の“X”はなかったのですが、このプロセスの中で、「将来性」をより強調するために“X”を付ける案が出ました。
結果として、「環境により配慮した製品」であることを表現する、素晴らしい名前になったと思います。
河野:
マグネシアは製鉄所や耐火物だけでなく、健康商品などにも使用されるほど、私たちの生活に密着したものです。
製品名にそのマグネシアをイメージできるワードが入っていることで、お客様により親近感と興味を持っていただきやすいのでは、と思います。
淵本:
私は現在、営業という立場ですが、技術プレゼンに加えて製品に「機能を表す名前」が付いていることは非常に有益であると感じています。
これまではお客様ごとに特定の材質名で紹介することが多く、製品の技術的なポイントや価格が議論の中心となるケースがほとんどでした。
今回の活動を通じて、社会的にも重要なポイントである「環境」についてもお客様とお話し、当社の商品を紹介することができるようになったと実感しています。
MAGreenX™が活躍する現場 ― RH設備における技術的価値
「どの様なお客様にMAGreenX™を強くお勧めしたいですか?」
河野:
MAGreenX™の具体的な価値を説明する前に、まずはMAGreenX™が使用される「RH」という設備について簡単に説明します。
RHは製鉄所の「二次精錬」という工程で使用される設備になります。溶けた鋼に酸素や金属などを添加し、鋼の温度、成分などを調整することで、最終的に要求される鋼の品質に到達させるものです。
そのため、設備の内張りとして使用される耐火物は厳しい条件にさらされます。
「具体的に、どういった厳しさがありますか?」
淵本:
代表例を挙げると、「温度」、「時間」、「成分」でしょうか。それぞれは、お客様が製造されている鋼の種類や、生産計画などにより、お客様ごと、または同じお客様でも時期によって違いが出ます。
「それだけ厳しい環境にさらされる耐火れんがの中で、MAGreenX™はどの様な価値を発揮することができるのでしょうか?」
淵本:
RHでは、鋼の中の炭素含有率を下げたり、鋼の温度を上げることを目的として、酸素を鋼に向かって吹込みます。
その際、高温の酸化鉄が発生するのですが、炭素量の多いマグネシアカーボンれんがをこの様な状況下で使用すると、「液相酸化」と呼ばれる現象が起き、製品の中の炭素が消失し、表面の組織が隙間の多い状態になってしまいます。
そうなると、高いパフォーマンスを発揮することができなくなります。
MAGreenX™では炭素の含有量を極力減らすことで、パフォーマンスの向上を図るとともに、お客様にとって様々なメリットを発揮することができます。
まるで魔法瓶のような断熱効果。熱ロス低減でエネルギー効率向上に貢献

「パフォーマンス以外のメリットでは、どの様なものがあるでしょうか?」
阿南:
マグネシアカーボンれんがでは、炭素含有量と熱伝導率に相関関係があり、炭素含有量が少ない製品ほど、熱伝導率が小さい、つまり熱が伝わりにくい、という特徴があります。
先ほど、RHでは溶けた鋼の温度を上げる操作がある、という説明がありましたが、こういった設備で熱伝導率の大きい製品を使用すると、熱が製品を伝わって設備外に放出されてしまうのです。
こういった現象を「熱ロス」と呼んだりもします。
「折角上げた温度が、製品の選び方ひとつで下がってしまうんですね」
淵本:
はい。そのため、RHでマグネシアカーボンれんがを使用する場合は、熱ロスを低減する、という観点からも炭素含有量を極力減らした方が良い、という訳です。
普通のマグカップと、魔法瓶のようなイメージをしてもらえるとわかりやすいと思います。
河野:
そうですね。その場合、マグカップが炭素の多いマグネシアカーボン、魔法瓶がMAGreenX™となります。
当社がシミュレーションした結果では、RH以外の設備で使用されるマグネシアカーボンれんがとMAGreenX™を比較した場合、RH設備の外表面温度を最大で数十℃下げることが可能となります。
これはつまり、MAGreenX™の適用により、お客様は設備内の温度を高く保つことができ、エネルギー効率良く生産を行うことができることを意味します。
六価クロムリスクの排除とCO₂排出量80%削減

「これまでRHで使用されてきた製品についてお聞かせ下さい」
阿南:
RHでは、現在もマグクロれんがが広く使用されています。
実際、黒崎播磨のRH用耐火れんがでは、現在でもマグネシアカーボンれんがよりマグクロれんがの方が多く生産されています。
それほど、マグクロれんがはRH用の耐火物として主力製品です。
「現状広く使用されている『マグクロれんが』には、どの様な問題や課題があるのでしょうか?」
河野:
マグクロれんがは、条件によって「六価クロム」という人体や環境に有害な物質を生成することがあります。製鉄所で使用される前後で問題がなくても、ご使用期間からご使用後、廃棄までの間に六価クロムが生成されるケースがあります。マグクロれんがの最大の課題は、この六価クロムです。
ただし、先ほど申し上げた様に「条件によって」ですので、マグクロれんがが、必ずしも人体に有害である、という訳ではありません。
阿南:
製造部署としても、マグクロれんがの六価クロムに対しては常に注意しており、六価クロムを生成しにくい製品の製造を常に心がけています。
淵本:
MAGreenX™の環境面での最大の価値は、マグクロれんがにおける六価クロム生成のリスクを排除できることです。
MAGreenX™やTOUGHMAX™などのマグネシアカーボンれんがは、酸化クロムを含有しない耐火れんがです。
そのため、お客様のご使用時はもとより、廃棄の際にもマグクロれんがと比較して安心してお取り扱いいただける製品となります。
「MAGreenX™は人体・環境により優しい製品である、ということですね。」
淵本:
その通りです。
「その他に、マグクロれんがと比較してMAGreenX™が環境面で優れている点はありますか?」
阿南:
MAGreenX™は不焼成のマグネシアカーボンれんがですので、製造時の「焼成」という工程がありません。
焼成れんがは、燃料を燃やすことで熱を発生させ、その熱でれんがを焼き上げていきます。その結果、優れた組織を得ることができ、高温の使用環境にも耐えうる製品ができあがります。
ただ、れんがを焼く際には燃料を燃やす必要があるため、二酸化炭素の排出を避けることができません。
一方、不焼成れんがにはこの焼成工程がなく、製造時に発生する二酸化炭素の排出量が焼成れんがに比べ著しく低いことが特長です。
「実際に、焼成れんがと不焼成れんがの二酸化炭素の排出量はどのぐらい違うんですか?」
阿南:
れんが1トンを作る際に発生する二酸化炭素の排出量を比較すると、不焼成れんがは焼成れんがより二酸化炭素排出量が約80%も削減できます。
「そんなに違うんですか!?」
河野:
はい、焼成工程で必要なエネルギーは、それほど膨大である、ということです。
MAGreenX™が今後さらに拡がれば、お客様のみならずサプライヤーも含めた形で、さらに環境保護に貢献できる、と考えています。
1.5倍のパフォーマンス向上事例と海外展開への期待

「実際に、MAGreenX™を使用しているお客様はどのぐらいいらっしゃるのですか?」
淵本:
実は、MAGreenX™は日本国内のRHでは、すでに多くの実績があります。
特にRHの下部槽や浸漬管と呼ばれる部分では、マグクロれんがに置き換わってご使用いただいています。
「RHの下部槽や浸漬管というのはどういった部分ですか?」
河野:
RHは、溶けた鋼を運搬する溶鋼鍋に、浸漬管と呼ばれる2本の管を挿し込みます。
その後、設備の内部を真空にすることでRH設備内へ溶けた鋼を吸い上げるような操作を行います。
「ストローの様な感じですか?」
河野:
正にそのような感じです。RHの下部槽や浸漬管は、吸い上げた際に実際に溶けた鋼と耐火れんがが接触する部分で、最も過酷な使用環境と言って良いと思います。
そのため、耐火れんがの交換頻度も高く、お客様にとってパフォーマンス向上ニーズが最も高い部分です。
「交換頻度が高いということは、この部分でMAGreenX™を使うことができればその効果も高いということですね」
阿南:
その通りです。MAGreenX™は正にそういった部分でお客様から高い評価を得ています。
一例としてご紹介すると、あるお客様ではマグクロれんがからMAGreenX™へ替えることで、パフォーマンスが1.5倍になった、という事例もあります。
「1.5倍とはすごいですね!」
淵本:
もちろん、全てのお客様で同じ効果が得られるわけではありませんが、先ほどの事例のように、環境負荷の低減だけではなく、お客様の生産性を向上を通じて、お客様の製造コスト削減にも大きく貢献できる可能性があります。
「MAGreenX™を使用する上での注意点などはありますか?」
淵本:
マグネシアカーボンれんがは、炭素含有量によって耐熱スポーリング性、つまり温度変化に伴うれんがの割れやすさが大きく変化します。
一般的に、炭素含有量が少ないマグネシアカーボンれんがの方が、温度が変動した時に割れやすくなります。
そのため、お客様の使用条件によって炭素含有量を調整する必要があります。
「使用条件によって製品を使い分ける必要がある、ということですね」
河野:
そうですね。ただし、MAGreenX™に限らず、耐火れんが全般において、お客様の使用条件に応じて製品の品質を調整する必要があり、MAGreenX™が特別扱いづらい製品である、ということではありません。
阿南:
また、様々なお客様にMAGreenX™をご使用いただく中で、多くの改善ニーズや知見をいただき対応してきましたので、お客様の条件に合わせたご提案ができます。
淵本:
今後は、日本国内だけでなく、海外のお客様にもMAGreenX™をご使用いただき、その効果を実感していただければ、と願っています。
国内での信頼を、世界のスタンダードへ

「MAGreenX™はRH以外の設備でも、使える可能性はあるのでしょうか?」
河野:
その可能性は十分あると思います。
例えば電気炉という、スクラップなどを溶かす設備では、現在でもマグネシアカーボンれんがが使用されています。電気炉では、一部の条件で炭素含有量をこれまでのレベルから下げた方が良さそうだ、という知見もあることから、将来的にMAGreenX™をベースとした材質が高いパフォーマンスを示す可能性はある、と考えています。
「ありがとうございます、最後に何か伝えたいことはありますか?」
河野:
RHは鋼の高品質化を図る上で有効、かつ重要な設備であり、今後ますます耐火れんがに対するニーズが高まっていくことが予想されます。
そのような中で、製品の耐用向上だけではなく、環境負荷の低減も含めた価値をアピールできれば、と思っています。
研究部署の一員として、今後MAGreenX™をはじめとした耐火れんがの品質改善に取り組み、さらにお客様に価値を感じていただける商品開発を行いたいと思っています。
阿南:
私は、製造部署の人間として、まずは安定した品質で商品をお届けすることが責務であると認識しています。MAGreenX™をより安心してご使用いただけるように、工場一丸となって改善に取り組み、より高品質の製品を安定して製造することを心がけたいと思っています。
淵本:
私はMAGreenX™に関して、開発から製造、販売までを経験してきました。
特に開発では、日本国内のお客様にMAGreenX™を広く認知いただくまで時間をかけながら対応しました。結果として、多くのお客様にMAGreenX™がご愛顧いただけていることを、まずは嬉しく感じております。
今後、このMAGreenX™が広く世界に広がり、世界中のお客様にその価値を実感していただける様になることを願っています。
