NEXCERA®
低熱膨張と軽量化の強みを活かし、半導体から宇宙空間へ。セラミックスの無限の可能性に挑戦。
NEXCERA®
チームメンバー
- 技術研究所セラミックス研究グループ長 佐藤
- セラミックス事業部ファインセラミックス部生産技術グループ長 石飛
- セラミックス事業部ファインセラミックス部品質技術グループ長 服部
- セラミックス事業部セラミックス営業部マネージャー 藤澤
半導体の進化に伴い、より高い精度が求められてきた

「NEXCERA®の開発背景についてお聞かせください」
佐藤:
セラミックス研究グループ長の佐藤です。NEXCERA®の開発に至った経緯としては、半導体露光装置用の材料としてのニーズがありました。
半導体露光装置のステージには、もともと鉄が使用されていました。しかし、半導体露光の高速移動化に伴い、より変形しにくく、軽量で剛性の高い素材が求められるようになり、その結果、「アルミナ」というセラミックス素材が使われるようになりました。その後、半導体の微細化が進むにつれ、熱膨張による影響が露光時の精度に影響を及ぼすようになり、熱膨張の小さい材料として窒化ケイ素系の「サイアロン」が使用されるようになりました。
さらに、半導体の進化に伴い、より高い精度が求められることが予想されたため、当社は他社に先駆けて、2000年頃から室温付近でほぼゼロ膨張を実現できる素材の開発に取り組みました。こうして開発されたのがNEXCERA®です。
ほぼ熱膨張しない、低熱膨張のセラミックス

「NEXCERA®の技術的な特徴についてお聞かせください」
服部:
開発に携わった品質技術グループ長の服部です。先ほど開発の経緯でもお伝えしましたが、NEXCERA®の最大の特徴は、室温付近でほとんど熱膨張しない低熱膨張のセラミックスであるという点です。そのユニークな特性を活かし、軽量かつ高剛性を実現し、半導体製造装置分野における性能向上に貢献してきました。
また、母材同士を接合する拡散接合技術や、材料内に空隙がないという材料的特徴を備えています。これらの特性を活用することで、お客様の高度な要求に応じたカスタマイズが可能です。さらに、複雑なデザインの部材を、ミラーユニット単一の材料で提供できるという強みがあります。
藤澤:
セラミックス営業部マネージャーの藤澤です。営業の立場からは、NEXCERA®の技術的な特徴を踏まえ、お客様には「室温付近でほぼ熱膨張しないゼロ膨張」「長期間にわたり、安定した形状を保つ経年安定性」「高い加工精度を叶える超精密部品」「軽量ながら剛性を確保した高剛性」「光学用途にも対応可能なミラー特性」といったメリットをお伝えしています。
このように、NEXCERA®は半導体分野をはじめとする、高度な性能特性を求めるさまざまな分野で活用されています。
改良を繰り返してきた結果、商品ラインナップの広がりへ

「開発にあたって苦労された点や大変だった点はどこでしょうか?」
佐藤:
もともと、NEXCERA®の開発は、熱膨張がプラスの成分とマイナスの成分を組み合わせることでゼロ膨張を実現するという理論計算に基づいて進められました。実験室で作成した小さなサンプルでは、計算通りの結果が得られました。
しかし、実際に大きなサイズで製品化してみると、熱膨張が安定しなかったり、色ムラが発生したりと、さまざまな問題が生じました。
これらの問題を解決するために、添加成分の調整や原料の管理の徹底を行いました。特に、原料の管理状態によって成分が左右されることがあったため、品質管理を強化することで、安定した製品の提供を目指しました。開発そのもの以上に、実際の製品化の工程において多くの困難を乗り越える必要がありました。
服部:
しかし、試行錯誤を繰り返したおかげで、シリーズのラインナップを拡充できたことも大きな成果でした。現在、NEXCERA®のラインナップは4〜5種類まで増えていて、改良を繰り返してきた積み重ねの結果だと考えています。
今、不可能なことを可能にする

「どのようなニーズを持つお客様に最適な商品なのでしょうか?」
藤澤:
営業の現場では、お客様から「高剛性化」「軽量化」などの性能向上に関するニーズはもちろん、「コスト削減」「短納期化」などのご要望もいただいています。ただし、すべてのご要望に対応することは難しいため、私たちは「今、不可能なことを可能にする」というスタンスでお客様のニーズに応えていきたいと考えています。
NEXCERA®を導入することで、機械自体の性能や装置の性能が向上し、社会に貢献できることが理想です。現在は半導体分野での採用が主流ですが、今後は宇宙開発をはじめ、さまざまな分野への展開も視野に入れています。より細かなニーズをお伺いしながら、さらなる可能性を広げていきたいと考えています。
低熱膨張と軽量化の強みを活かし、半導体から宇宙空間へ

「宇宙産業の展開がはじまるきっかけをお聞かせください」
石飛:
生産技術グループ長の石飛です。今から十数年前のことですが、ある展示会でNEXCERA®を出展していた際に、JAXAの開発担当者の目に留まったことがきっかけでした。その方は、人工衛星の構造体が温度変化を受けた際の挙動測定を担当されており、宇宙空間での動きを正確に把握するための基準材料として使用できないか、というご相談でした。
そこで、NEXCERA®を基準器として製作・納入したところ、非常に優れた材料であると高く評価いただきました。その後、さらに「光学衛星のミラーとして使用すれば、従来の材料よりも効率化できるのではないか」というお話をいただき、NEXCERA®のミラー適用に向けた取り組みを進めています。
「競合製品と比較して、どのような違いがありますか?」
服部:
低熱膨張材料として現在広く使用されているものに、「低熱膨張ガラス」があります。これは、高精細な位置決めが求められる半導体製造装置や宇宙産業の分野で用いられてきた素材です。
当社のNEXCERA®は、この低熱膨張ガラスと比較して剛性が約1.5倍高いという特長があり、お客様からも高く評価されています。また、ガラスはその特性上、長期の寸法安定性に課題を持つ場合がありますが、NEXCERA®は長期間の使用においても寸法安定性に優れるというメリットを持っています。
「NEXCERA®の環境への配慮についてお聞かせください」
佐藤:
最初に挙げた通り半導体分野では、半導体露光装置のステージが高速で移動するため、NEXCERA®を導入することで軽量化が進み、移動に必要なエネルギーを削減できるというメリットがあります。これにより、省エネルギー化に貢献できます。また、宇宙産業においても軽量化は重要な要素です。ロケットの打ち上げ時には大量の燃料が必要ですが、部材を軽量化することで燃料消費の削減が可能となります。
さらに、間接的な影響として、NEXCERA®を用いた半導体露光装置で製造される半導体が微細化し、使用電力の削減につながることも期待できます。今後、IoTやAIの普及が進むにつれ、半導体の需要が大幅に増加すると予測されています。そのため、省エネルギー化の観点からもNEXCERAの貢献は大きいと考えています。
セラミックス材料、その無限の可能性に挑戦

「今後、どのような市場展開を予定していますか?」
藤澤:
今後の事業の柱のひとつとして成長させていきたいのが、宇宙産業です。現在、宇宙産業はすでに50兆円を超える市場ですが、今後は2030年に84兆円、2035年には100兆円を超えると予測されています。この市場に向け、NEXCERA®製ミラーをはじめとする当社のセラミックス製品を宇宙衛星に搭載し、宇宙産業関連事業の拡大を目指しています。
しかし、課題もあります。現状では、人工衛星におけるセラミックス製品の認知・普及がまだ十分ではないこと、そして宇宙産業における黒崎播磨の知名度がまだまだ低いことです。そのため、NEXCERA®をはじめとする自社製品の魅力や優位性をしっかりアピールしながら、黒崎播磨のブランド認知向上にも取り組んでいきたいと考えています。
「今後の技術開発の方向性について教えてください」
服部:
私は、セラミックス材料には無限の可能性があると考えています。これまで、半導体分野をはじめ、宇宙産業や医療分野など、幅広い産業で応用が進んできました。特に、エレクトロニクス製品や光学製品の分野では、従来の材料からセラミックスに置き換えることで、飛躍的な性能向上を実現してきた実績があります。
半導体の集積度に関する未来予測として、1965年にインテルが提唱した「ムーアの法則」があります。この法則に沿って、数十年間にわたり技術開発が進んできましたが、近年では「この法則も限界に達するのではないか」という懸念も出ています。しかし、そのたびに技術革新によって限界を乗り越えてきた歴史があります。
その技術革新の中で、セラミックスの性能向上は極めて重要な役割を果たしてきたと言えます。むしろ、セラミックスなしでは技術の進化は成し得なかったと考えています。
これからも、セラミックスに対する期待は非常に大きいと感じています。特に、さらなる高精細化・高速化に対応するための高剛性化や、装置環境で発生する熱の影響を極限まで抑えるための高熱伝導化は、今後の重要な技術課題となります。その実現のために、これまで以上にスピーディーな材料開発を進めていきます。
石飛:
私たちの強みは、お客様のニーズに沿った技術開発を行ってきたことにあります。それこそが、当社が市場で生き残ってこられた理由であり、今後も継続していくべき姿勢だと考えています。
これまで、主要な市場であった半導体分野に引き続き注力する一方で、新たな市場である宇宙開発にも積極的に挑戦していきたいと考えています。当社の事業目標である「世界一の顧客価値の実現」を軸に、さらなる成長を目指します。
