転炉の耐火物寿命を40%以上延ばす画期的な商品を、アジアから世界へ

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チームメンバー・インタビュー

背景

TOUGHMAX™

転炉の耐火物寿命を40%以上延ばす画期的な商品を、アジアから世界へ

TOUGHMAX™

チームメンバー

  • 黒崎播磨/台湾技術サービス担当スタッフ 山﨑
  • 黒崎播磨/営業担当マネージャー 曽我野
  • 台湾事務所営業・技術サービス 黄

マグネシア-カーボンれんがの損耗を抑え、転炉の稼働時間を延ばす

「TOUGHMAX™はどのような製品か教えてください」

曽我野:
海外営業グループで台湾のCSC(中国鋼鉄)様を担当しております曽我野です。
TOUGHMAX™は酸化マグネシウムと黒鉛を主原料とした「マグネシア-カーボンれんが」と呼ばれる耐火れんがの一種で、主に製鉄所で使用される製品です。主な用途は、製鉄所において銑鉄を鋼に変える工程で使用される「転炉」と呼ばれる設備です。

黄:
黒崎播磨台湾事務所の黄です。台湾のお客様への対応や、日本からいらっしゃるスタッフのアテンドを担当しています。TOUGHMAX™は現在、日本だけではなく台湾のお客様にもご使用いただいており、高い評価をいただいている製品です。

「TOUGHMAX™採用のメリットを教えてください」

山﨑:
窯炉技術部でお客様に対し、TOUGHMAX™を含めた窯炉用耐火物の技術的サービスと商品の技術改善を担当している山﨑です。
まず、TOUGHMAX™が使用される「転炉」について簡単にご説明します。
転炉とは、直径数メートル、高さは10メートルにもなる非常に大きな設備で、その中に溶けた銑鉄である溶銑、鉄スクラップを投入し、「脱炭処理」と呼ばれる工程を通じて炭素を除去し、鋼を製造する設備です。

転炉内部は、温度や物理的・化学的条件が大きく変化する過酷な環境です。そのため、転炉内では、れんがを設置する場所に応じて、特性の異なる材質・製品を適切に選定する必要があります。
また、こうした温度的・化学的な条件によって、マグネシア-カーボンれんがは徐々に擦り減って、「溶損」や「損耗」と呼ばれる現象が発生します。

お客様は損耗の度合いを確認しながら、一定期間の稼働後に転炉を停止し、れんがを解体・交換します。この間は転炉を稼働させることができないため、生産効率が低下してしまいます。そこで、できるだけ長く転炉を止めずに運転を継続するために、「耐火物の長寿命化」が強く求められていました。

TOUGHMAX™は、転炉内でも特に「装入壁」と呼ばれる部分での使用を想定して開発されました。ここで高い性能を効果を発揮することで、これまで転炉の稼働回数を伸ばすうえでネックとなっていた、装入壁での耐火物寿命を延ばすことが可能となって、結果として転炉全体の稼働期間を長くすることに寄与します。

黄:
私もお客様の現場で転炉内のれんが交換に立ち会うことが多いのですが、転炉は非常に大きな設備である一方で、れんがの位置がわずかにずれるだけでも、その後の損耗に大きな影響が出るなど、耐火物の築造という面でも高い精度が求められる設備です。

曽我野:
耐火物製品の評価基準は、一般的に1回の稼働期間でどれだけの鋼を生産できたかが重要です。山﨑も「適切に」と言っておりましたが、転炉全体に最高級品を使えば良いというわけではありません。それでは逆にコスト的に「もったいない」部分が出てしまいます。そこで、「どこに力を入れるべきか」を見極めて、付加価値の高い製品を適切に配置することが重要です。

黄:
そのためにも、現場でお客様としっかり議論を重ね、実際に転炉を観察しながら、特に損耗の激しい部位を見極めることが非常に重要なステップになります。

「これまでの耐火れんがとの違いは、どこにありますか」

山﨑:
従来のマグネシア-カーボンれんがと比較すると、TOUGHMAX™はその名のとおり「タフ」。つまり、破壊に対する強度に優れた製品で、過酷な環境でも高い耐久性を発揮します。

曽我野:
また、転炉などに使用される、いわゆる「窯炉用れんが」の中でも、TOUGHMAX™は環境負荷の低減に貢献できる製品です。

タフな特性をそのままネーミングに

「TOUGHMAX™の名前の由来を教えてください」

山﨑:
TOUGHMAX™という名前は、製品の大きな特長である「破壊に対する高い抵抗性」、つまり“タフである”という点から名づけられました。従来製品と比較して、より高い抵抗性を実現していることがポイントです。
ネーミングにあたっては、お客様に製品の特性やメリットが最も伝わるように、関係者数十名で検討を重ねた結果、この名前に決定しました。製品の魅力をしっかり表現できていると考えています。

黄:
「TOUGH」や「MAX」は、日常生活でもよく目にする言葉なので、お客様にとっても製品の特長を直感的にイメージしやすいと思います。実際にご使用いただく中で、特に“破壊されにくい”という点は実感していただけるのではないでしょうか。

曽我野:
営業の立場からは、これまでの技術説明に加えて、ブランド名を冠した製品をご紹介できることを非常にうれしく思っています。
TOUGHMAX™は、耐火物としての長寿命やコスト面での優位性に加え、「環境」というキーワードも備えた製品で、自信を持ってお客様にご提案できる商品です。

「TOUGHMAX™を使用する上での注意するべき点を教えてください」

黄:
従来のマグネシア-カーボンれんがと比べて、使用方法や保管条件において特別な注意点はありません。現在お使いのマグネシア-カーボンれんがと同様の取り扱いで、ご使用いただける製品です。

溶銑の使用を減らし、高炉由来のCO₂排出量削減に貢献

「TOUGHMAX™の環境ブランドとしての役割を教えてください」

山﨑:
転炉では、鋼をつくるための鉄源として、高炉で鉄鉱石から作られる「溶銑」と、再利用可能な「鉄スクラップ」の両方が使用されます。このうち、溶銑を使用する場合は、高炉の操業時に多くのCO₂が排出されます。一方で、スクラップを使用すればCO₂排出量を大幅に抑えることができるため、環境負荷の観点からはスクラップの使用比率を高めることが望まれています。
ただし、溶銑やスクラップは、転炉の上部にある投入口から、数メートルから十数メートル下の「装入壁」に向かって投入されます。鉄はマグネシア-カーボンれんがと比較して比重が非常に大きく、同じサイズでも重さがまったく異なります。ビルの2~3階の高さから鉄の塊が落ちてくるようなもので、それだけ大きな衝撃が耐火れんがに加わることになります。

そのため、スクラップの使用量を増やすと、装入壁に使われているマグネシア-カーボンれんがの損耗が激しくなり、転炉の稼働期間が短くなってしまうという課題がありました。
しかし、TOUGHMAX™を使用することで、この装入壁の耐火物寿命を延ばすことが可能になります。結果として、スクラップの使用量を増やしても、れんがが長持ちし、溶銑の使用量を減らすことができるようになります。つまり、高炉由来のCO₂排出量削減につながるという点で、TOUGHMAX™は環境ブランドとしての役割を果たしていると考えています。

曽我野:
TOUGHMAX™をご使用いただくことで転炉の稼働期間が延びれば、れんがの解体や交換の頻度も減らすことができます。メンテナンス工事の回数そのものが減ることも、環境負荷の軽減につながると考えています。

黄:
転炉を解体・整備する際には大型の重機が必要となりますので、その稼働回数を減らせるという点でも、環境への貢献は大きいと思います。

日本国内に加え、台湾でも効果を実証

「TOUGHMAX™はどの様なお客様に採用いただいていますか」

曽我野:
製品開発当初は、日本国内の転炉を有するお客様の装入壁で採用いただきました。従来のマグネシア-カーボンれんがと比較して、耐火物の寿命延長効果やCO₂排出量削減といった実績を積み重ねてきました。
これらの実績をもとに、製品ラインナップの拡充やさらなる改良にも取り組んでいます。
2023年には海外展開の第一歩として、台湾での導入を実現しました。現地で開催した技術講演会では、TOUGHMAX™に関するプレゼンテーションを行い、一部のお客様には個別のご紹介の機会も設け、ご好評をいただきました。

山﨑:
実際にご採用いただいたお客様からは、「従来品と比べて40%以上の寿命延長が確認できた」との声もいただいています。

価格を超える技術力で、高評価を獲得

「海外第一号の台湾展開では、日本市場とは違った苦労はありましたか?」

曽我野:
台湾のお客様からは、以前より特に価格面でのご要望をいただくことが多く、従来品より高価なTOUGHMAX™を試験的に使用いただけるかどうかは、正直なところ未知数でした。しかし、技術的なメリットをしっかりご理解いただいたうえでの採用につながったことは、非常に意義のある成果でした。
その背景には、個別プレゼンテーションの実施や、長年にわたる技術サービスを通じた信頼関係の構築、そして昨今のカーボンニュートラル実現への関心の高まりなど、さまざまな要素が重なったことが大きかったと感じています。
結果として、台湾のお客様からも従来製品以上のご評価をいただいています。

山﨑:
台湾市場への展開にあたっては、まずはお客様の現場の実態を把握することから始めました。れんがの寿命を把握するため、お客様が転炉の状態を定期的にモニタリングしていることに注目し、そのデータをできる限り収集・分析しました。
その結果、装入壁が寿命のネックとなっていることを、客観的なデータで明確に示すことができました。
これまで台湾市場では、「お客様の関心を引くための決定打が足りない」と感じていましたが、TOUGHMAX™はまさに、そうした状況を打破する“ゲームチェンジャー”になったと考えています。

黄:
当時、データ収集が大変だったことを覚えています。

山﨑:
その甲斐あって、転炉全体の損耗状況を精度高く把握し、それに基づいたTOUGHMAX™の最適な配置を提案することができました。

「他にご苦労された点はありますか?」

山﨑:
TOUGHMAX™の特長を示す指標のひとつに「破壊エネルギー」という値がありますが、これは従来の耐火物ではあまり使われてこなかった評価項目でした。そのため、お客様にこの指標の意味や価値をご理解いただくのに苦労しました。

黄:
その点は台湾でも同様で、「破壊エネルギー」という言葉自体にあまり馴染みがないお客様も多くいらっしゃいました。そこで、図や写真、グラフ、スケッチなどを用いて、できるだけ視覚的にわかりやすく丁寧に説明するよう心がけました。
また、TOUGHMAX™の開発は日本の技術スタッフが担当していたため、より詳しいご説明が必要な場面では私が通訳を務めました。言葉の面でも多くの事前準備が必要でしたが、そのおかげで黒崎播磨独自のプレゼンテーションを行うことができ、お客様にも大きな魅力を感じていただけました。

世界市場の開拓と、新たな用途展開へ

「今後の展開についてどのようにお考えですか?」

山﨑:
まずは、転炉の装入壁において、これまで以上にTOUGHMAX™をご活用いただければと考えています。
現在は、日本と台湾での実績にとどまっていますが、今後はヨーロッパ、北米、南米など、世界各地のお客様にもTOUGHMAX™を知っていただき、実際にお使いいただいたうえで、その効果を実感していただきたいと思っています。
また、TOUGHMAX™には、従来のマグネシア-カーボンれんがと比較して、耐熱スポーリング性の改善が見られるというデータもあります。そのため、転炉の「底吹羽口」など、他の部位への適用も可能性があると考えています。今後は、適用分野のさらなる拡大にも取り組んでいきたいと思っています。

「これからの取り組みについてお聞かせください」

曽我野:
これまでも耐火物業界として、CO₂削減や環境への配慮に取り組んでまいりました。
その中でTOUGHMAX™は、従来品にはなかった、「お客様のニーズ」と「CO₂排出量削減」の両立を実現した、まったく新しい製品です。
今後は、より多くのお客様にTOUGHMAX™の魅力を知っていただけるよう、営業として、これまで以上にお客様に寄り添った提案を心がけていきたいと考えています。

山﨑:
TOUGHMAX™の技術は、転炉に限らず、他の設備でも効果を発揮できる可能性を持っていると考えています。
今回の開発で得られた知見を活かし、TOUGHMAX™自体のさらなる改善や、新製品の開発に取り組むことで、今後もお客様により高付加価値な製品を提供していきたいと思っています。
そのためにも、まずはTOUGHMAX™をはじめとした弊社製品をご使用いただき、共に歩んでくださるお客様との信頼関係を、技術サービスを通じてさらに深めていきたいと考えています。

黄:
台湾市場の担当として、まずは現地のお客様へのフォローをしっかりと進めます。
将来的なグローバル展開においても、台湾での実績は非常に重要なデータになると考えていますので、これまで以上に日本の技術者との情報共有を強化し、黒崎播磨全体の製品力向上と海外展開に貢献していきたいと思います。